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あじさい柄 湯呑みの修復

マイスターリペアで復元しました

今回は、紫陽花(あじさい)が描かれた蓋付きの湯呑みの修復のご依頼を承りました。青から紫、そしてピンクへと美しく色が移りゆくグラデーションに、繊細な花びらの一枚一枚まで丁寧に描き込まれた、大変上品な一客です。

お話を伺うと、こちらの湯呑みはもう食器として使うつもりはなく「とにかく形をきれいに戻してほしい」というご要望でした。実用よりも、思い出の品としてこれからも飾って眺めたいというお気持ちが伝わってくるご依頼でした。

そこで今回は、修理跡がほとんどわからないほど精巧に仕上げる「マイスターリペア」という技法で修復を進めることになりました。バラバラになってしまった破片からどのように元の姿を取り戻していったのか、工程を詳しくご紹介していきます。

修理前の状態

お預かりした際の状態がこちらです。

湯呑み本体は縁からいくつものヒビが入り、細かい破片に分かれてバラバラになってしまっていました。割れた断面に不足がないか、確認のためマスキングテープで仮止めされたしましたが、触れるとパリパリと崩れてしまいそうな、かなり緊張感のある状態です。

さらに、本体とセットになっている蓋にも、縁の欠けと細かなヒビが見つかりました。蓋には可愛らしい蝶々と紫陽花の柄が描かれており、こちらも本体と同じくらい丁寧な修復が求められる状態でした。

底面には「華雲」という窯印が入っており、作家性の高い一客であることがうかがえます。だからこそ、絵柄や色味を絶対に損なわないよう、細心の注意を払って作業に取りかかりました。

今回のように蓋付きの湯呑みは、本体と蓋の両方で色柄がぴったり合っていることが美しさの決め手になります。片方だけを直しても、もう片方との色味がずれてしまうと違和感が残ってしまうため、最初の段階で本体と蓋の状態をあわせて確認し、全体のバランスを見ながら修復方針を組み立てていきました。

マイスターリペアとは

マイスターリペアとは、修理跡をあえて景色として楽しむ「金継ぎ」とは対照的に、修理跡がほとんどわからないほど精巧に仕上げる修復方法です。破損前の見た目を極限まで再現することを目的としており、飾って楽しむ美術品やコレクションアイテムに向いている技法です。ただし、合成樹脂を使用して仕上げるため、食事での使用には適しません。今回のように「食器として使用しないので、とにかく元の見た目を取り戻したい」というご要望には、マイスターリペアが最適なご提案となります。

作業内容

今回のマイスターリペアでは、接着・欠け埋め・成形・着色・コーティングと、いくつもの工程を積み重ねて仕上げていきました。それぞれの工程を詳しくご紹介します。

1. 本体の接着

まずは破片一つひとつの断面を丁寧に清掃し、割れた際に付着した汚れやほこりを取り除きます。今回は破片の数が多く、どの断面がどこにつながるのか、パズルのように照らし合わせながら接着していきました。わずかなズレが積み重なると全体の形が歪んでしまうため、位置と角度を何度も確認しながら、一片ずつ焦らず慎重に貼り合わせています。

2. 蓋の欠け埋め

蓋にあった欠けの補修には、UVライト(紫外線)で硬化するパテを使用しました。欠損部分にパテを適量盛り付けた後、あらかじめ欠けた形状に合わせて型取りしておいたシリコンをその上から被せ、UVライトを照射して硬化させます。型に沿ってパテが固まるため、元々のカーブや厚みを忠実に再現でき、成形の精度と作業スピードの両方を高めることができる方法です。

3. やすりで形状を整える

接着とパテ埋めが終わった部分は、やすりで少しずつ研磨し、指で触れても段差を感じない滑らかな形状に整えていきます。削りすぎると本来のカーブが崩れてしまうため、全体のシルエットを確認しながら、あくまでも「元の形に近づける」ことを意識して仕上げました。

4. 本体のグラデーション塗装

下地が整ったら、青から紫、ピンクへと移りゆく本体の背景色を塗り重ねていきます。既存の色味を注意深く観察しながら少しずつ調整して塗っては乾かし、また重ねるという作業を繰り返します。継ぎ目に色の境界線ができてしまわないよう、グラデーションの中間色を丁寧に作り込んでいくのがこの工程の一番の難所です。

5. 紫陽花の花びらを描き入れる

背景の色が整ったら、いよいよ紫陽花の花びらを一枚ずつ丁寧に描き入れていきます。花びらの重なり方や色の濃淡、葉の葉脈まで、元の絵付けをよく観察しながら筆を進めました。細かなモチーフほど、わずかな筆致の違いで印象が変わってしまうため、集中力を要する繊細な作業です。

6. 徐々に完成へ

花びらや葉の下描きを重ねるごとに、少しずつ紫陽花の柄が本来の姿を取り戻していきます。一気に仕上げるのではなく、全体のバランスを見ながら段階的に描き込んでいくことで、違和感のない自然な仕上がりに近づけていきました。

7. コーティング塗装で仕上げ

最後に、本体と蓋の両方に艶のあるコーティング塗装を施して完成です。コーティングを施すことで色柄が保護されるだけでなく、周囲の釉薬の質感ともなじみ、修理箇所がより自然に溶け込んで見えるようになります。

修理後

無事に修復が完了しました!

当社ではお客様のご要望をしっかりヒアリングし、今回のように「実用よりも見た目の美しさを最優先したい」というご希望には、マイスターリペアという最適な技法をご提案しています。

バラバラだった破片がしっかりとひとつにまとまり、あのグラデーションの美しさと紫陽花の柄が、まるで割れる前と変わらない状態まで蘇りました。もちろん内側のヒビ、欠けも馴染むように修繕しております。

蓋を合わせても継ぎ目に違和感がなく、思い出の一客として、これからも安心して飾っていただけます。お渡しの際、お客様にも大変喜んでいただけました。

「食器としては使わないけれど、どうしても捨てられない」というお品物は、意外と多くいただくご相談です。実用性を求めない分、見た目の美しさを何より優先できるのがマイスターリペアの強みです。今回のように細やかな絵付けが施されたお品物こそ、職人の技術が最も活きる修復といえるかもしれません。

修理・修復なら『レストーレ』

レストーレではマグカップをはじめ、陶器や建材、アンティーク家具、美術品など様々なジャンルの修理・修復に対応しております。

今回ご紹介したような、食器として使わず見た目の美しさを最優先したい場合の「マイスターリペア」のほか、修理跡を景色として楽しむ「金継ぎ」など、お品物の状態やご要望に応じて最適な修理方法をご提案いたします。

見積もりは無料で、お問い合わせフォームやメール、お電話、LINEからのご相談を受け付けております。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。