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【年に一度の特別版】「壊れた」と「諦める」の間でレストーレが蘇らせた大切な品,思い出の品4選 | 2025年版

「おかえりなさい」の瞬間を求めて。
〜ご挨拶と感謝〜

早いもので2025年もあとわずかになってしまいました。今年・昨年・一昨年、そしてそれ以前に、私たちレストーレに大切な愛用品の修復をお任せくださり、誠にありがとうございました。
この度、年に一度だけの特別なお便りとして、この「レストーレ通信」をお届けしています。

私たちは、修復を終えたお品を箱から出し、お客様が「おかえりなさい」と声をかけてくださる瞬間の喜びを、決して忘れません。
私たちにとって、その一言こそがすべての原動力です。

今回が第一回の配信となりますが、毎年12月に年に1回のペースで配信していこうと思っています。

修復への思いと1年間の歩み

私たちレストーレがこの一年(2024年11月〜2025年12月)で改めて深く感じたのは、お客様にとって「モノ」が単なる物質ではないということです。
それはご家族との思い出であり、人生の節目であり、何物にも代えがたい「記憶の器」であると、補修の度に胸に刻んでいます。

いただいたすべてのご依頼に、「壊れる前の美しさを極限まで取り戻したい」「これからも長く使い続けてほしい」という一心で向き合ってまいりました。

出来事

2025年における社内の出来事としては新たに美大出身で前職はディズニーランドで内外装の特殊塗装などを手掛けていた青木さんを当社のスタッフとして迎え入れました。


2025年入社の青木さん

【機材の導入や新し技術の開発】
溶接機の導入や、レジンの気泡を抜くための「真空チャンバー」の導入、無いパーツを作成するための新しい技術も研究導入できました。

これが真空チャンバー!と言うマシンです。
レジンの主材と硬化剤を撹拌するときにどうしても気泡が入ってしまうのですが、真空チャンバーを使うこと気泡を完全に除去することができます。
透明度の高いフィギュアのパーツを作成したり、大理石の天板にクリアなコーティングを施したりすることができます。

今年は全国のお客様から500件以上のご依頼をいただきました。
このコラムでは、私たちがこの一年で手掛けた「感動の修復物語」4選と、その他印象に残った修復の事例を交えながらご紹介していきます。
ぜひ、お茶でも飲みながら、ゆっくりとお読みいただければ幸いです。

代表取締役
荒井 勇

【修復の物語 1】波佐見焼の窯元、康創窯によるワイングラスの金継ぎによるアップサイクル

2025年の10月に以下のような趣旨のご相談をいただきました。

【お客様から届いたご相談のメッセージ】
波佐見焼、康創窯の窯主(お客様の従兄弟様)が
ワイングラスはまだ70〜80%のできでもう少しと頑張っていましたが昨年8月亡くなりました。
脚が折れてしまったので修理をお願いしたいと思っていますが宜しくお願いします。

との事で脚が折れてしまったワイングラス2点を修理したいとのご相談を受けました。
なんとも素敵なグラスです。

 

お客様のご要望により、2点のうち1点は脚を短くしたいというご要望もいただきました。
これだけの細い脚をくっ付けて、修理後ご使用できるように強度も保たなければならないという難題に直面することになったのですが・・
検討した結果、接合部位を太くして強度を保ち、なおかつ見た目にもこの素敵なワイングラスの風格を落とさないように仕上げる道を考えました。
レストーレで通常扱っているサービスの中で「クイック金継ぎ」というメニューでご提案をすることにしました。
強固に接合するためにガラス繊維に布地に強固に固着するレジンを練り込み、接合部を補強。
その後「純金」を撒いて美しく仕上げることにしました。

【修理後】


強度もしっかりとなり、純金の装飾がお品に見事にマッチしました!

仕上がりにとてもお喜びいただけました。
2点のお品は大切にケースに入れてお飾りいただくとの事でした。
【頂戴したお言葉】
綺麗に直していただいてありがとうございます
デキャンタ(他に依頼したいお品)もあるので是非またお願いしたいです!

跡が残ってしまう修理だとしても、修理の跡も新しく付加されたデザインだと考えることができます。

とっても素敵です!

【修復の物語 2】マイスターリペアの神髄。フランスアンティーク燕のウォールデコ
〜この世でたった一つしかない思い出の品が直るまで〜

お客様が国家試験に合格した際に入手したというフランスアンティークの燕のウォールデコ
今また新たな挑戦の時を迎え、己を鼓舞するために(ヨーロッパでは大変縁起の良いとされているので)飾った矢先にお品を落としてしまいひどく破損してしまわれました。

お客様はその時、涙が止まらなかったそうです。
何とか、元の愛らしいつばめさんに再会したい

フランスアンティークの この世でたった一つしかない思い出の品。

もう二度と会えないのかと、翼をもぎ取られたような悲しみに打ちひしがれていたところ、レストーレの存在を知って下さりご連絡をいただきました。

今回の修理は「マイスターリペア」でのご依頼でした。
当店のサービスの中で最も技術と時間を費やしてご提供する最高ランクのサービスです。
基本的にどのお客様からのご依頼でも全力を尽くして修理をしているのですが
今回のお客様のようにお品にまつわるエピソードやお品への愛情をお伝えいただいた場合、私たちも
気持ちが乗っかってくる部分はあると感じています。
絶対に元通りに修復してお客様に喜んでもらいたい!という気持ちがいっそう湧いてきます。

頭部のあたりはかなり細かく割れていたため、私たちも修理するまではどんな最終形になるのかがわかりませんでした。
ジグソーパズルのように、破片と破片を繋ぎ合わせていきました。
経験と技術そして根性!ですが、お客様の喜ぶお顔を想像しながら集中!
強度を増すために内側にガラス繊維で補強を施しながら原型を取り戻していきました。
色合いも慎重に調色を行い同じ色が出るまで色合わせ!長年の経験と根気です😃

作業風景の動画はコチラ!

【修復後】
 

今年の中でも記憶に残った渾身の修復でした!

【お客様から頂戴したメッセージの抜粋】

レストーレ様
お世話になっております。
つい先刻、ウォールデコつばめを無事に受領致しました。

レストーレの皆様のお力添えにより、傷痕ひとつない元気な姿で舞い戻ってきてくれました。
本当に喩えようのない、この上なく素晴らしい魔法にかかったような気持ちです。
ぎゅっと抱きしめて「よく還ってきたね、おかえり」と話しかけたら、思わず涙が溢れてきてしまいました。

正直、たかが“アンティークの壁架けつばめ”に過ぎないにもかかわらず、梱包もこれ以上ないほど丁寧にして頂き感謝の念にたえません。
知らない人が見たら、国宝級の何かが入っていると勘違いされるかも🤭
──改めまして、
言葉では言い尽くせないほどのご厚情を賜り、本当に有難うございました。
悲しいハプニングではありましたが、レストーレ様のような“物”と“人の心”の双方を修復される素晴らしい方々を存じ上げることが出来たのは、私の人生においても大きな僥倖でした。
皆様の足元にも及びませんが、人を笑顔にするために働きたい、生きていきたいとの思いを私自身新たに致しました。
つばめを救って頂いただけではなく、かけがえのない財産・学びを与えて頂き、篤く御礼申し上げます。

これからもお仕事を拝見・応援させて頂ければ幸いです。
レストーレ様の益々のご活躍を心より祈念しております。
どうか皆様 お身体に気をつけて、これからも傷つき罅割れた物と心を蘇らせて下さい。

たくさんの感謝をこめて。

P.S.レストーレさんに再び生命を吹き込んで頂いたつばめ、元気に飛翔しております🪽✨✨

【感想】

本当に勿体無いくらいのたくさんのありがたいお言葉を頂戴し、我々の方こそ感激してしまいました。

お写真のお二人の笑顔が本当に素敵です!

【修復の物語3】アメリカンヴィンテージフィギュアの修復

【ご相談の内容】
アメリカンヴィンテージフィギュアのコレクターの方からのご相談です。
実は有名なお笑い芸人の方でアメトイのコレクターの方でした!
大川知英さんが出演しているyoutube
大川知英さんのインスタ

所有されているフィギュアの足部分が折れており、紙粘土ようなもので簡単に補修されている状態でした。
自重で脚に負荷が強く掛かっている状況でした。
綺麗にかつ、再び折れないように直したいというご依頼を受けました!

【修理前の状態】


 

こちらは「マイスターリペア」で修理を行いました。
一番のポイントはどうやって「補強」をするか?ということです。
単に足を接着しただけでは再び自重で折れてしまう恐れがあるからです。
そこで、鉄心にガラス繊維をレジンで練ったものを巻きつけて底面から差し込んで補強を行うことにしました。

作業の風景動画はコチラ

【修復後】
 

【お客様から頂いた声】
お疲れ様です!
ありがとうございます🙇‍♂️❗️

見させていただきました!
これは凄いですね🙏❗️
感謝でございます🙇‍♂️🙇‍♂️

【感想】

アメトイのビンテージフィギュアってやっぱり魅力あるなって思いました。

コレクションしたくなる気持ちがわかります。

意外とアメトイの古いものって状態が悪いものも多くて修理するのが大変だったりするのですが、ビシッと直せたと思います!

【修復の物語4】陶磁器製のペンギンフィギュアの修復

【お客様からのご相談内容】
母の大事にしておりました置物を誤って落としてしまい、破損してしまいました。
亡き父との北欧旅行の記念とのことで、修復いただけるかどうかご検討を
お願いしたいものです。

【修理前の状態】

ご依頼主様のお母様の大切にされていらっしゃるお品との事でご依頼承りました。
破損状況的にはかなり厳しい状態だったのですが、私たちレストーレの腕の見せ所!
精一杯頑張りますよ!

【修復後】

【お客様から頂いた声】
本日無事に品物を受け取りました。
ありがとうございました。

母も元通りのペンギンに大喜びで、
亡き父との海外旅行を思い出して
いるようでした。

この度はご対応くださり
ありがとうございました。

【感想】

やっぱり、ご依頼主様からのメッセージから感じたことは

お品物には誰かの思いがこもっていると言うことです。

お品物を見た時にご旅行時のことを思い出して頂けたとしたら本当に嬉しいです。

愛用品と長く付き合うための知恵

【飾る・使う編】日々の破損リスクを減らす3つのルール

1 陶器の扱い

振動温度差が最大の敵です。修理をした陶磁器は「電子レンジ」と「食洗機」の使用はしないでください!

急な熱湯を注がない。棚に入れる際は、隣の陶器とぶつからないよう、間に布などを挟む。

日々の小さな注意で寿命が延びます!

2 設置場所

フィギュアと陶器の「安全地帯」

地震対策日差し対策が重要。陶器は落下リスクの低い棚下段へ。フィギュアは紫外線で変色・劣化するため、直射日光の当たらない場所を選ぶ。

3 掃除方法

愛着を深める正しいホコリの払い方

陶器は硬いスポンジや研磨剤で洗わない。フィギュアは化学薬品(アルコールなど)を避け、柔らかい筆やエアダスターで優しくホコリを払う。無理にパーツを分解しないことが鉄則。

【しまう編】長期保管で失敗しないためのポイント

1 陶器の梱包

梱包材は新聞紙ではなくエアキャップ(プチプチ)や緩衝材を使用。食器同士が触れる部分には必ず緩衝材を挟む。マグカップの取っ手など突起部分は特に厚く保護する。

2 フィギュアの収納

フィギュアの可塑剤が原因のベタつきや変形を防ぐため、ビニール袋(特にポリ塩化ビニル)ではなく、紙や布で包む。密閉せず、通気性の良い場所に保管する。

3 共通の注意点

陶器や工芸品は、カビや劣化の原因となる湿度の高い場所(押し入れ奥、床下収納)を避ける。温度変化が少ない場所に保管することが、変色・ひび割れのリスクを減らす。

壊れたのは、終わりじゃない。また、一年後に「希望の続き」をお届けします

長文にも関わらず、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

実は、この一年で私たちが手掛けた感動的な修復事例は、ここに紹介しきれないほどたくさんございました。
一つひとつに、お客様の深い愛情と、私たち職人のこだわりが詰まっています。
すべてをお見せできず、大変心苦しく思っております。
どうかご容赦ください。

壊れてしまった時、私たちはつい「失敗した」「もう終わりだ」と考えてしまいがちです。
しかし、修復とは、その後の「物語の続き」を紡ぐ行為です。

私たちレストーレは、来年もその物語を紡ぐお手伝いを、さらに高い技術と、より深い心遣いをもって続けてまいります。

来年2026年の抱負として、私たちは「修復の先の感動」を追求します。
単に元通りにするだけでなく、修復を通じて、お客様にとってその愛用品が以前にも増して「かけがえのない存在」となるよう、技術とサービスの向上に尽力してまいります。

どうか皆様の愛用品が、これからも長く、大切に使われますように。

そして、もしまた「悲しいハプニング」が起きてしまった際には、どうぞ諦めずに私たちを思い出してください。
「壊れたのは、終わりじゃない」— その希望を胸に、いつでもご連絡をお待ちしております。

たくさんの感謝と希望を込めて。

レストーレ 一同