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優勝トロフィーの修理「布着せ」技法で取手をお直し

【トロフィー修理事例】少年サッカー優勝杯の取っ手を「布着せ」で修復しました

少年サッカーチームの優勝杯や表彰盾は、選手たちの努力の証であると同時に、チームの歴史そのものを受け継いでいく特別な品物。
今回ご紹介するのは、毎年優勝したチームが持ち回りで保管している優勝トロフィーの修理事例です。

単純に接着剤で貼り付けるだけでは十分な強度が得られないと判断し、金継ぎ修理で用いられる伝統技法「布着せ」を応用して修復を行いました。トロフィー修理・優勝杯修理・表彰盾修理をご検討中の方にも参考にしていただける内容です。

修理前の状態

お預かりしたのは、取っ手部分が本体から外れてしまった状態の優勝トロフィー。本体には紅白の「ペナントリボン」が付けられており、そこには歴代の優勝チーム名が一つひとつ書き加えられています。

毎年新しいチーム名が加わっていく、優勝チームの歴史を刻んだ記録でもある品物のため、これまでの歴史を損なわないよう慎重な取り扱いが求められました。

破損の状態

素材は明確な表記がなく特定が難しいものでしたが、触れた際の感触から、取っ手部分はカップ本体に比べてずっしりとした重みがあることが分かりました。破損時の衝撃に加え、取手の重さが接合部分に日常的な負荷をかけ続けていたことも破損の一因と考えられます。

作業内容

今回の修理でまず検討したのは「どのように接合すれば再び外れずに済むか」という点でした。取っ手の重量や接合面の状態を踏まえると、通常の接着だけでは再び取れてしまうリスクが高いと判断しました。

接着だけでは不十分と判断した理由

取っ手はかなり重く、そのまま接着してもまた取れやすい状態だったため、強度を増すための工夫が必要でした。特に今回のトロフィーのように毎年受け継がれ、持ち運ばれる機会が多い品物では、より高い強度が求められます。

ルーターによる下地処理

接着を行う前段階として、まず取っ手側とカップ本体側、それぞれの接着箇所をルーターで目荒らししました。表面がなめらかなままだと接着剤が定着しにくく、時間の経過とともに剥がれの原因になってしまいます。あえて表面に細かな凹凸をつけることで接着剤が入り込む面積が増え、密着度が格段に高まります。

接着・固定

両面の目荒らしが完了したら、いよいよ接着剤で取っ手と本体を接合します。取っ手はかなりの重量があるため、接着した直後は自然に垂れ下がったり位置がずれたりしないよう、15〜20分ほどは手で支えたまま固定する必要がありました。

この間は手を離すことができず、接着剤が硬化し始めるまでじっと位置を保ち続けます。手が離せるようになったあとも、わずかな振動で位置がずれてしまう可能性があるため、型取りやテープを使って取っ手を固定し、そのまま完全に硬化するまで動かないよう養生しました。

「布着せ」という技法を応用

採用したのは「布着せ」と呼ばれる技法です。本来は漆器の金継ぎ修理において、割れや欠けの補強に用いられる伝統的な方法ですが、今回のようにトロフィーの取っ手のように強度が求められる修理にも応用することができます。

具体的な工程としては、まず布を貼る箇所をルーターで目荒らしし、布の定着を良くします。

そこへ接着剤を塗布した上から布を貼り付け、しっかりと乾燥させます。乾燥後、さらにその上から合成樹脂を重ねて塗り込んでいくことで、接合部分をしっかりと補強していきます。布を挟み込むことで接着剤や樹脂の層に「粘り」と「面」の強度が加わり、点ではなく面で支える構造になるのが大きなポイントです。

肉盛り状態による強度アップ

布着せの工程では、布を挟みながら接着剤や樹脂を何層にも重ねていくため、修理箇所は元の厚みよりも一回り〜二回りほど厚みが増す「肉盛り」状態になります。一見するとボリュームが出てしまうように思われるかもしれませんが、この肉盛り状態こそが強度を飛躍的に高める重要な工程です。接合部分の厚みが増すことで衝撃を分散しやすくなり、以前よりも頑丈な状態へと仕上げることができます。

トロフィーのフォルムに沿う成形

Screenshot

肉盛りした樹脂が完全に硬化したら、表面の凹凸をやすりでなめらかに整え、トロフィー本来のフォルムに沿うように成形していきます。

着色・コーティング

最後に、周囲の色に合わせてシルバーで着色し、その上からコーティングを施して仕上げとしました。修理跡が目立たず、違和感のない自然な仕上がりに整えています。

修理後

布着せによる補強を施した結果、取っ手はしっかりと本体に固定され、再び取っ手を掴んで持ち上げても問題のない強度を取り戻すことができました。

接合部分は厚みが増しているものの、周囲の形状に合わせて丁寧に成形しているため、全体としての見た目のバランスも大きく損なわれることなく仕上がっています。ペナントリボンに刻まれた歴代優勝チームの記録もそのまま残しており、これから先も新しいチーム名を書き加えながら受け継いでいっていただけます。

修理後の取り扱いについて

布着せによって補強した箇所は高い強度を持ちますが、修理直後は接着剤や樹脂が十分に硬化しきっていない場合があるため、無理に引っ張ったり衝撃を与えたりせず、丁寧に扱っていただくことをおすすめしています。お手入れは柔らかい布で軽く拭き取る程度で十分です。

修理・修復なら『レストーレ』

レストーレでは、今回ご紹介したようなトロフィー修理・優勝杯修理・表彰盾修理をはじめ、陶磁器・漆器・置物・記念品など、さまざまな品物の修理・修復に対応しております。「接着剤で直したけれどまた取れてしまった」「重量があるパーツの補強をしたい」といったご相談も多くいただいており、品物の状態や素材、破損の状況に合わせて、金継ぎの技法である布着せをはじめとした最適な修復方法をご提案しています。世田谷区をはじめ、周辺エリアからのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

毎年受け継がれる優勝トロフィーのように、チームや思い出の歴史が詰まった品物も、諦める前にぜひ一度ご相談ください。丁寧なカウンセリングのもと、それぞれの品物に合った修理方法で、大切な品を再び手に取れる形へとお戻しします。