
マリメッコのマグカップ 取手修理
「布着せ」とクイックプラチナ継ぎでお直し

北欧の人気ブランド「マリメッコ(marimekko)」のマグカップ修理のご依頼を承りました。
今回は破損しやすい取手部分に「布着せ」という補強技法を取り入れた「クイックプラチナ継ぎ」で修復した事例をご紹介します。
モダンでおしゃれなモノトーン柄が入っており、お客様が日常の中で本当に大切にご愛用されていることがひしひしと伝わってくる素敵なマグカップです。
しかし、長年使われている中で一番負荷がかかる取手(ハンドル)部分が細かく破損してしまい、弊社のホームページを探してご相談をいただきました。
マグカップは毎日の生活に寄り添い、ホッと一息つくコーヒータイムやティータイムを彩る大切なパートナーです。「またこのお気に入りのマグカップで、安心しておいしいコーヒーを飲んでいただきたい」という強い思いを込めて、職人が丁寧に集中して修理させていただきました。
今回は、強度が求められる取手部分に最適な「布着せ(ぬのきせ)」という補強技法を取り入れた「クイックプラチナ継ぎ」で修復を行いました。スピーディーかつ強固に直せる「クイックプラチナ継ぎ」や「布着せ」の工程・魅力についても分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
修理前の状態

マグカップ本体から取手部分がすっぽりと外れてしまっており、さらに取手自体が複数のパーツに細かく砕けて、非常に小さな欠片も散見される状態でした。
一般的に陶器の破断であれば接着のみで直せる場合もありますが、マグカップの「取手」は飲み物を注いで持ち上げた際に最も強い重量負荷がかかる部位です。単に面と面を貼り合わせただけでは、日常使用の負荷に耐えきれず再破損してしまうリスクが高くなります。
そこで今回は、確実な強度と高い美観を短期間で実現するため、「布着せ」と「クイックプラチナ継ぎ」を組み合わせて修理を進めることといたしました。
クイックプラチナ継ぎ(現代風プラチナ継ぎ)とは
伝統的な本漆の代わりに新素材(高い安全性と耐久性を兼ね備えたエポキシ樹脂等)を活用し、仕上げに本物の「プラチナ粉」を蒔いて装飾する現代的な修復技法です。
数か月単位の乾燥期間が必要な伝統的な漆での金継ぎ・プラチナ継ぎと比べ、短納期での修理が可能な点が大きなメリットです。また、接着強度が非常に高く、硬化後の耐水性や耐久性にも優れています。
クイックプラチナ継ぎのお取り扱い上の注意点
- 電子レンジ・オーブン・食器乾燥機は使用不可:仕上げに使用しているプラチナ粉は金属のため、電子レンジにかけるとスパーク(火花)の危険があります。また急激な熱変化は破損の原因となります。
- 研磨剤入り洗剤・クレンザー・硬いスポンジは使用不可:表面のプラチナ粉を強くこすると剥がれる原因となります。洗う際は柔らかいスポンジで優しく手洗いしてください。
- 長時間のつけ置き洗いは避ける:長時間のつけ置きは劣化の原因となります。洗った後は水気を軽く拭き取ってください。
作業内容
今回のクイックプラチナ継ぎ修理における具体的な作業工程を解説いたします。職人が一つひとつの工程を丁寧かつ慎重に仕上げていきました。
1.接着準備

まずは破損した断面や周辺を丁寧に清掃し、長年の使用で付着した油分や目に見えない埃を完全に取り除きます。また、割れた際にできた微細なバリ(鋭い粉)をきれいに処理し、パーツ同士が正確に噛み合うよう下準備を行います。
2.取手を接着

高強度の速乾エポキシ系パテ・接着剤を用いて、バラバラになった取手のパーツおよび本体へ接着します。
取手はわずか1ミリのズレでも持ち心地や見た目が大きく変わってしまうため、最も緊張する作業です。パーツの角度や位置が元通りになるよう最大限の集中力で慎重に貼り合わせ、位置をしっかり固定して硬化させます。

足りない欠けの部分はパテで埋めて平らにしておきます。

3.布着せの下準備
艶々の陶器に布を接着すると後から剥がれやすいため、布を貼る部分のみあえて凹凸面を作ります。余分な箇所まで荒らさないよう十分注意して行います。
4.布着せ

それでは今回の要である「布着せ」を行います。「布着せ」とは、構造上弱い部分や接合部を強固にするために用いられる伝統的な補強技法です。
例えるなら、建築における「鉄筋コンクリートの鉄筋」や「ギプス」のような役割を果たします。布の繊維が一体化して強力な補強層を作るため、取手のように引っ張られる力がかかる場所でも抜群の耐久性を誇ります。接合部分に布を貼り重ねる「布着せ」を行うことで、取手に強い負荷がかかっても折れないよう強度を格段に高めます。
取手の接合部分や曲がり角などの負荷がかかる箇所に、薄く切った布帯をしっかりと密着させて貼り付けます。硬化後に表面の段差を研ぎ落として滑らかに整えることで、取手の折れ・再破損に対する強度が大幅にアップします。
5.面出しして滑らかに

接合と布着せが終わったら、ヒビの隙間や欠け落ちてしまった微細なパーツ穴を埋める作業に入ります。専用のパテを充填して凹凸を埋めていきます。固まった後に耐水ペーパー等で入念に研磨を行い、何度も触って確かめながら、段差や歪みのない完全に滑らかな下地を作り上げます。
6.プラチナ粉を蒔く

下地が完璧に整ったら、接合ラインに専用のうるしを薄く塗り伸ばし、絶妙なタイミングを見極めて最高級の本プラチナ粉を蒔いていきます。

プラチナ粉は金粉よりも落ち着いた品のある銀色の輝きが特徴で、現代的な洋食器やモノトーンの器に非常によく映えます。銀色=銀粉と思われがちですが、銀は空気中の成分と反応して時間経過とともに黒く変色(硫化)してしまうため、弊社では銀粉より変色が少ないプラチナ粉を使用します。

プラチナ粉がムラなく均一に密着するよう息をのむような集中力で作業を行い、固化した後、真綿(まわた)等で丁寧に磨き上げて優美でクールな輝きを引き出します。
修理後の仕上がり

丁寧な工程を経て、無事にクイックプラチナ継ぎによる修理が完了いたしました。

クイックプラチナ継ぎの「布着せ」がマリメッコのモダンでおしゃれなモノトーン柄によく合います。「布着せ」によって構造補強も完璧ですので、また日常のコーヒータイムで安心してお使いいただけます。

レストーレの陶器・アンティーク修理について
レストーレではマグカップをはじめ、陶器や建材、アンティーク家具、美術品など様々なジャンルの修理・修復に対応しております。
- 思い出の詰まった器が割れてしまった…
- 長年愛用している大切な家具の傷を直したい
- 他社で修理を断られてしまったお品物がある
当社ではお客様のご要望をしっかりヒアリングして、最適な修理法や仕上がりをご提案しています。このようなお悩みがございましたら、ぜひ諦めずに当社へご相談ください。熟練の職人がお客様の大切なお品物一つひとつの状態を見極め、最適な修復プランをご提案いたします。
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