
ヘレンド うさぎの置物 修理
型取りと金箔でお直し
今回は、ヘレンドのうさぎの置物をマイスターリペアにてご依頼を承りました。網目のように描かれた繊細な模様と、鼻先や足先にあしらわれた品のある金色の装飾が魅力の一品です。
小さなお品物ながら、一目でヘレンドらしい上質さが伝わってくる置物で、お客様が大切にされてきたことがよく分かりました。長い間飾られているうちに、耳が折れてしまい、さらに片足が紛失してしまったとのことでご相談をいただきました。1本の耳と1本の足、それぞれ違う方法でのアプローチが必要な、なかなか手強い修理となりました。
置物や人形の修理では、ヒビや割れの接着だけでなく、今回のようにパーツそのものが失われてしまっているケースも少なくありません。失われた部分をどう再現するかによって修理方法も大きく変わってくるため、まずはお品物の状態をしっかりと見極めることから作業を始めました。
修理前の状態

お預かりした際の状態がこちらです。

向かって左側の耳が根元から折れてしまっており、さらに前足が片方まるごと紛失している状態でした。耳は破片が残っていたため接着で対応できますが、足はパーツ自体が無いため、一から形を作り上げる必要があります。

耳のように破片が残っている破損は接着で対応できますが、足のようにパーツごと失われてしまうと、単純な接着では直せません。今回は幸いにも反対側の足が無事に残っていたため、それを頼りに形を再現していく方針で修理を進めることにしました。
ヘレンドのうさぎの置物について
ヘレンドは、繊細な絵付けと上質な金彩装飾で知られるハンガリーの名窯です。今回のうさぎの置物も、網目模様を一筆ずつ丁寧に描き込み、鼻先や足先には本金を使った装飾が施されています。小さなお品物の中に職人技が凝縮されているからこそ、修理の際にもその繊細さを損なわないよう、細心の注意を払う必要があります。
作業内容
今回は「耳の接着」と「足の再現」という、性質の異なる2つの修理を並行して進めていきました。
1. 残った片足の型取り

足は紛失しており、参考にできる破片がありません。そこで、無事に残っているもう片方の足の形状をシリコンで型取りしました。左右対称のパーツだからこそ使える方法で、この型をもとに失われた足の形を新たに作り出していきます。
2. 耳の断面を荒らす

耳の修理では、まず折れた断面をあえて目の粗いやすりなどで荒らす作業を行います。つるつるの断面のまま接着すると、後々の衝撃で再びはがれやすくなってしまうため、断面に細かな凹凸を作ることで接着剤との設置面積を増やし、より強固に接着できるようにする下準備です。
3. 耳の接着・面出し・着色

断面の下準備ができたら、耳を正しい角度で接着していきます。接着後は継ぎ目の段差をやすりで研磨して滑らかな面に整え、周囲の網目模様や地色に合わせて丁寧に着色していきます。細かい網目模様は少しのズレでも目立ってしまうため、一筆ずつ慎重に描き込みました。
4. 型取りした足をヤスリで整え、接着する

型取りをもとに新しく成形した足のパーツは、そのままでは表面に細かな凹凸が残っています。やすりで丹念に磨き上げ、本来の足の丸みや質感を再現できるよう形を少しずつ整え、形が整った足を本体へ接着し、接合部分の段差を滑らかに仕上げます。その後、耳と同じように網目模様を描き込み、全体の色味となじむように着色していきました。
5. 足先の金箔仕上げ

最後に、足先の金色の装飾を再現します。ヘレンドの金彩は本金が使われているため、塗料で色を合わせるのではなく、本物の金箔を貼り付けることで、質感も含めて忠実に再現しました。金箔ならではの輝きが、他の部分の金彩ともしっかり馴染んでいます。塗料の金色とは異なる、本金ならではの奥行きのある光沢は、貼り付ける角度や下地の状態によっても表情が変わるため、周囲の金彩と見比べながら丁寧に仕上げました。
修理後

無事に修復が完了しました。折れていた耳もぴんと立ち上がり、紛失していた足もしっかりと4本揃った状態に戻りました。

網目模様や金箔の輝きも周囲と違和感なくなじみ、以前と変わらない愛らしい表情のうさぎに仕上がりました。お客様にも、細部までこだわった仕上がりを大変喜んでいただけました。

パーツが完全に失われてしまったお品物は、直せないと諦めてしまう方も少なくありません。ですが今回のように左右対称の形状であれば、残った片方を手がかりに元の姿を再現できることがあります。手放す前に、まずは一度ご相談いただければと思います。
修理・修復なら『レストーレ』
レストーレではマグカップをはじめ、陶器や建材、アンティーク家具、美術品など様々なジャンルの修理・修復に対応しております。今回ご紹介したヘレンドのような繊細な置物やフィギュリンの修理も承っております。
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